55. エヘン虫よ、さらば
お茶のこが、クラッシック コンサートに行ったときの事です。
お隣のおばあちゃんが、曲の途中から 「コンコン」 と、咳込み始めました。
 
「ホールの空気、ムチャクチャ乾燥してるもんなー。こーいう『 静かにしなくちゃいけない時 』って、なぜか咳が出てくるのよね〜
…と、隣でお茶のこは、軽〜く考えておりました。
 
が、しかし。
おばあちゃんの咳はなかなか止まらず、しまいには 「ケホッ、ケホッ」 と咳き込み出す始末。
 
小刻みに震えるおばあちゃんの横で、お茶のこはハラハラ・ドキドキ。思わず、心の中でエールを送りました。
 
「がんばれ、おばあちゃん!!
もうすぐシンバルがババーンと鳴るはず!!
その時に、思いっきり咳をするのじゃ〜!!
 
お茶のこの願いが通じたのか、シンバルが 「バーン♪」 となったと同時に、おばあちゃんは 「ぐぇっふぉん!!!」 と、特大の咳をしたのです!!
「よっしゃーっ!! おばあちゃん、よくやったー!!」
お茶のこは、心の中で叫びました。
が、しかし…!!
 
「…コン、コン、ケホッ」
 
なんと、再びおばあちゃんが咳をし始めたのです!!
 
「げげっ。なんちゅーしつこいエヘン虫なんや…。おばあちゃん、大丈夫かな…」
お茶のこが心配していると、おばあちゃんがバッグを開けて、何やらガサガサ取り出しました。
 
「あ〜っ、おばあちゃん、飴を持ってきてるやん。よかったァ〜!!」
 
「これで、安心してコンサートに集中出来るわん♪」
お茶のこは、ホッとしました。
 
んが、しかし…。
「ガサ、ガサガサ、ガサガサガサ、ガサガサ、ガサガサ…」
 
「えっらい長いこと、ガサガサしてはるな〜」
お茶のこは、ふとおばあちゃんの手元を見ました。すると…
 
おばあちゃん、その飴、いつからカバンに入っとるねん!?
包み紙に、ムチャクチャ引っ付いとるやん…。
 
お茶のこは、またもやハラハラ。
結局、フィナーレまで、おばあちゃんの咳は止まりませんでした…。
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